魔王と王女の物語
「なんなの…コーの馬鹿!」


階段を駆け下り、さっきまで夢中になって遊んでいた黄色いひよこを掌に乗せて花畑に座り込む。


「馬鹿…」


「なんでだよ」


今1番聞きたくない男から声をかけられて、ぴよぴよと鳴くひよこの背中を撫でながら無視を決め込んだ。


「チービ、無視すんなって。エリノアが心配してたぜ」


「…エリノアって…お姫様のこと?」


――自分のことは“チビ”としか呼んでくれないのに。

それが本当に悔しくて、掌にひよこを乗せたまま立ち上がり、隣に座ろうとしていたコハクを振り切って歩き出す。


「なんで怒ってんだ?妬いてんのか?」


「ち、違うもん!コーの馬鹿、ついて来ないで!」


「俺、お前の影だもん」


鬼ごっこのように後ろをついて来るコハクがラスの背中側から腕を伸ばしてひよこを奪い、頭の上にひよこを乗せて、腕を引いて座らせた。


「なあ、妬いてんだろ?」


「…お姫様…変な声出してた」


コハクの眉が上がり、唇を尖らせてつんと顔を逸らして、目から水が零れそうになるのを必死に堪える。


「…エリノアさんとこ戻ったら?腕とか揉まれちゃって嬉しそうにしてたし、どうせ私なんか胸もちっちゃいし…」


「チビ、拗ねんなって。ほら、こっち来い」


――コハクに腕を引かれて抱きしめられると…優しそうな顔をして笑っていた。


「コー…」


「チビがやきもち妬くようになったとはな。嬉しいなあ、やっぱ俺はお前が1番だなー」


「…ほんと?」


「疑うなよな」


ちゅっとキスをして、ごろごろ転がりながら縺れ合ってうっとりしてしまうキスをされて、それでもなおかつ姫とコハクの仲を疑った。


「コーって誰にでも“友情の証”をするの?姫ともしちゃったの?」


赤い切れ長の瞳がふっと和らいで、首筋や頬にキスをして耳元で囁いた。


「チビは俺のものだし、俺はチビのもの。影から解き放たれたら覚えとけよ…無茶苦茶にしてやるからな」


「え?無茶苦茶って…私をいじめるの?コーの馬鹿、絶対ヤだからね」


「いーや、絶対無茶苦茶にするからな」


鼻を甘噛みした。
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