魔女の悪戯
「カルボーロの王子と結婚するくらいなら、貴方と結婚するわっ!!」
な、何だと…!?
忠純は突然の事に全く頭がついて行かないが、とにかくまずい状況なのは肌で感じ取っていた。
とにかく、王女を落ち着かせねばっ。
これまでだらんと遊んでいた腕を必死で動かし、振るえる手で王女の肩をそっと押す。
王女はぎゅうっと抱き着いていてなかなか離れてはくれなかったが、少し力を強めて自らも一歩下がると、忠純と王女の間にやっと隙間が生まれた。
ラミア王女は緑メノウの瞳をうるうるとさせ、背が低い分自然と上目遣いになって忠純を見つめる。
忠純は顔から火が出る思いだったが、とにかく己が落ち着かなければ、と一呼吸置いてから話し出した。
「なりませぬ。
仮にも一国の姫君ともあろうお方が、やすやすと男に抱き着くなど、ご法度にござりまする。
それに、軽々しく臣下に嫁ぐなどと申すものではございません。
どうか、どうか…」
話ながら、顔が赤いのがわかって恥ずかしく、なんともいたたまれない思いだった。
王女は普段の紳士なレオとは微妙に違う堅苦しい言葉に、違和感を覚えたが、姿形はレオなので取り留めて気にすることはなかった。
忠純はさらに続ける。
「まず、かような事を下働きの者たちに見られるようなこの場所でなさってはなりませぬ。
姫君とは…」
忠純の言葉が段々にただの説教になっていって、王女は苛立ちを覚えて、話の途中で忠純の手をとり、自室の中に引っ張り込んだ。
繋がれた手の柔らかさに、また顔の温度が急上昇する。
王女は自室に入ると、高級そうなソファにどっかりと腰掛けた。