魔女の悪戯
「レオ、貴方何を言っているの。
カイル様より意地の悪い男、他にいないってくらい最低最悪な奴なのに!!」
王女は忠純の真意が読めず、苛立っていた。
王女の言っていたカイル王子の意地悪は、所謂、こちらでいう小学生の好きな女の子に対する意地悪と同じなのだ。
それに気付いた忠純は、目の前の美しい王女と酷い言われようの王子の事を親のような気持ちで考えていた。
「ったく、酷い言い草だね。」
低い声がして、二人が声のする方を見ると、金髪碧眼の“美少年”が部屋に入って来た。
「っ!
カ、カイル様っ…」
その少年こそ、隣国カルボーロの第一王子にして王太子、カイル王子である。
が、その容貌はたしかに王族らしく美しいものの、美青年というよりは美少年。
ラミア王女より年上には見えなかった。
忠純は異国の王子に、武士らしくというよりは先程覚えたばかりな騎士の礼節を取った。
「何をしに来たのよ!?
さっさと帰って頂戴!!」
「はぁ!?
別に俺はラミアなんかに会いに来たわけじゃないしっ!!」
「なら早く出てって!!」
「やだね。」
「なんでよ。」
「ラミアに用は無くても、レオには用がある。」
──また儂…というか、レオナルドか…。
忠純は心底ため息をつきたい気分だった。
「レオ、今日は負けないからな!!」
カイル王子は、忠純に向かってチェスを差し出した。
忠純は当然、チェスなんて知る訳も無く。
ぽかんとチェス盤を眺めた。