魔女の悪戯
チェスと将棋は良く似てはいるが、忠純は将棋しかやったことがない。
無い頭を必死に働かせてチェスのやり方を聞き出し、カイルと対峙してみたが、ちんぷんかんぷんだった。
忠純は剣の腕はあっても頭ではレオに遠く及ばないのであった…。
カイル王子も、二十五連敗中のレオがいきなり最弱になり、面白くなさそうだ。
ラミア王女は紅茶を飲みながら、苛立った様子で二人の勝負を眺めていた。
そんな状況に、忠純は汗ダラダラで額はもうぐっしょり。
一刻も早く岩佐の柚姫に会いたくて仕方が無かったが、そんな奇跡は起こるはずも無く。
魔女がほくそ笑んで見ているだろうと思うと腹立たしくてならなかった。
そんな忠純を救ったのは、ある意味こんな状況に追い込んだラウロ王子だった。
「なんだ、みんなここにいたのか。」
「ラウロ!」
「お兄様!」
二人の声が重なり、ぷいっと二人ともそっぽを向いた。
そんな二人に、王子、苦笑。
「カイルはまたレオとチェス?」
「邪魔するなよ。
やっと勝てそうなんだから。」
「そいつは悪かったね。
でも、邪魔をするよ。」
ラウロは控えていた執事に用を言い渡す。
「単刀直入に言うけど、カイル、ラミア。
二人の縁談が父上達の間で纏まった。」
周りの空気が、凍り付いた。