監禁恋情
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何らかの毒が使われた形跡がある。
それも、長期間に、少量ずつ。

病院の医師である厚子の夫が言った。

紀一は、静かに眠るさくらに寄り添いながら、湧き上がる怒りを覚えていた。

元医者でありながら気付かなかった自分に。

「おそらく、毒は毎日の食事に入っていたんではないでしょうか。」

厚子の夫は、人の良さそうな顔立ちに、複雑そうな表情を浮かべ、そう言った。

「…さくらのことを、頼んでもいいですか。」

紀一は、厚子に言った。
厚子は、深刻な面もちで頷いた。

今更、和樹が言った言葉を思い出した。



(その子が大切なら、気づいてあげれることがあるはずです。あなたなら。)


あの言葉を、もっと深刻に受け止めていれば。
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