BLack†NOBLE

 毎日声に出して呼んでいた彼女の呼び名が、輝かしく懐かしい。



「茉莉果…………」


 もう一度呼んでみても、ただ水音が全てを掻き消していく。


 蔵人は俺のことを「弱い」と言っていた。


 その通りだと思う。





 大切な者を失う恐さが、大切な者をつくる恐さになっていたのに…… 彼女はあまりに純粋に自然に、俺の中へ浸透してきた。


 その彼女を突然奪われた俺は、なんて弱いのだろう。



 愛するべきじゃなかったのかもしれない。


 それでも会いたい。ただ、会いたい。

 もう一度、あの笑顔に触れてみたい。










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