BLack†NOBLE
小さなバスタブに、水量すら一定でないシャワーのバルブをひねる。
蔵人から借りていた服は、迷いなくダストボックスに投げた。
その服も新品だった。蔵人のために用意されていた衣装を俺が着た……だけど返却するつもりなどないし、蔵人もそんな細かい事を求めてはこないだろう。
肩は青く腫れていた。
ニナが擦り込んでくれた薬のお陰で痛みと赤みは退いているが、蔵人の革靴が食い込んだお陰で打撲傷と呼ぶに相応しい怪我に昇進だ。
水なのかお湯なのか、はっきりしないシャワーを頭からかぶる。
寝不足の頭と体に、調度いい。
「茉莉果……」
シャワーの音に掻き消されていく俺の声は、酷く哀れだ。