BLack†NOBLE
会話を繰り返している間に、あっという間にムラーノの船着き場に到着した。
辺りを見渡してみても、そこは俺が知っている景色とあまり変化がない。
イタリアは国の法律で街並みを変えてはならないと定められているくらいだ。
そう簡単には新しい建物が建たないのだ。
「こちらです」
茉莉果お嬢様の手を引きながら、部屋をリザーブしているホテルに入る。
「街を歩いてみたいわ、柏原」
「明日にいたしましょう。夜は、あまり治安がよくないのですよ。貴女に万が一の事があれば一大事だ」
不服そうに唇を尖らせたお嬢様を抱き寄せて、チェックインカウンターに向かう。
『お待ちしておりました、紫音様。こちらが、ルームキーでございます。荷物は既に部屋に運んでありますよ』
綺麗なイタリア語で、部屋の案内を受ける。
『俺達のことを、訪ねて来た奴はいるか?』早口で質問をすると
『いいえ』と短い回答がくる。
嘘をついていないかと、相手の目を睨みつけると彼女は軽く両手をあげた。
少し用心しすぎるくらいで丁度いい。
相手は一筋縄ではいかないのだから。