BLack†NOBLE


 キッー! というタイヤのすり減るようなブレーキ音が聞こえた。

 空回りした車のエンジン音と怒鳴り声。



『なに?』


 アリシアは、スフォリアテッレの味を決めるのを邪魔されて不機嫌そうにサングラスをはずし窓の外を確認しようとした。


 俺は、咄嗟にそのアリシアの腕を掴むと……赤い煉瓦の壁を背にアリシアを抱き寄せる。

『瑠威?』


 店内は、客で賑わいすぎていた。


『窓から離れろ!』


 俺が声を上げるのと同時に、窓ガラスが酷い音をたてて砕けた。


 アリシアを力強く抱き締めて、その衝撃に備える。


 背にした厚い煉瓦の壁に、無数の銃弾が撃ち込まれていく。砕けるガラスと煉瓦。悲鳴。逃げまどう買い物客。



 アリシアを抱き寄せ身を小さく屈むと、自分の腕が震えだす。


 店内は騒然なんてものじゃない、耳をつんざく悲鳴が飛び交い。我先にと安全な場所を求めた。

 店主は一瞬で店の奥に隠れてしまい。客は各々姿勢を低くして割れたガラスの上を逃げ惑う。


 幸いにも、窓が小さく煉瓦の壁は最高の働きをしてくれている。

 鳴り止まぬ銃声。撃ち崩されないか心配だ。




 また俺たちを狙ってきた───


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