BLack†NOBLE
『やだやだ!! 恐いよ瑠威!! なんで本気で撃ってきてるの? これドッキリ番組じゃないよね?』
『ない悠長なこと言ってるんだ。わかるだろ、蔵人に関わるとこういう目に遭わされるんだよ!』
さすがのアリシアも、その小柄な体をガクガクと震わせて必死に俺にしがみついてきた。
その背中に両腕を回し、アリシアを抱き締める。
『怒鳴って悪かった。大丈夫だ。なんとかする』と耳元で囁いてやるが、何か確証があるわけでもなく消え入りそうな声は不安は拭えないようだ。
蔵人か? 奴は、ここまでして俺を捕まえたいのだろうか……?
それなら、あのナイトクラブを出た時点で追い掛けて来ればいい。
逃がしたと見せかけ、泳がせて捕まえるのを楽しんでいるだろうか?
それとも別の組織。蔵人に恨みがある連中が俺たちを追っている。相手はマフィアで、手加減はない。
弟である俺か、アリシアを殺して……蔵人への当て付けにしようと企む奴等か……
『そっちの方が辻褄があうな』
煉瓦の壁が、砕け散る音。悲鳴に怒号。
窓ガラスは先に割れて、破片が店内に散乱している。
『死にたくないよ……遺書かいたけど……本当は、私まだ死にたくない』
アリシアは、俺の胸に額ををつけたまま呪文のようにそう呟いていた。
俺だって、こんな可愛らしいスフォリアテッレの店で死ぬのはごめんだ。