BLack†NOBLE



『クロード? ……クロードが助けに来てくれた!!』



 アリシアは、握り締めていた俺の手を放すとパリンパリンとガラスを砕きながら、声の主に抱き着く。



 真っ黒いスーツに、タイは締めてない。

 黒いシャツは第三ボタンまで外されていて襟がたててある。

 顎は直角に保たれ、姿勢が良いせいかとても堂々として見える。


 そして一切の隙がない。


『アリシア、瑠威とは仲良くなれたようだな?』


『うん、でもやっぱりクロードが一番よ』


 頼りなくて悪かったな、この馬鹿女。

 アリシアが両手で蔵人の頬を包む。その顔は、ここが銃撃を喰らったばかりの場所だというのに動揺が見られない。


 右手がアリシアの後頭部に添えられると、お決まりの"熱烈な挨拶"が交わされる。



 その隙に、店の奥に逃げ……

『待て、瑠威』

 れるはずがないか。



 大股で近づいてきたレイジが、俺の前に立ちはだかる。



『瑠威様、お怪我はございませんか?』


 心配そうに眉を寄せたレイジに、『蔵人にやられた肩が重症だ』と伝えると『それは良かった』と、レイジは安堵のため息をついた。


 何が良いのか、詳しく教えて欲しいものだ。


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