BLack†NOBLE



『今の銃撃は、別組織か?』


 蔵人を睨み付けると、『ああ』と適当な答えが返ってくる。



 アリシアとの"熱烈な挨拶"を終えた蔵人は艶めく表情で、スフォリアテッレが並ぶショーケースを目を細めて眺める。



『おい』

 店の奥から、様子を伺っていた年配の女性店主に声をかけると奴はスーツの内側から多額のユーロ紙幣を取り出し……ショーケースの上に置く。



『修繕費だ。受け取れ。領収書はいらない……かわりに出来立てのスフォリアテッレを、そのバスケットに詰めてくれ』



 店主は目を白黒させた。


『聞こえないのか? スフォリアテッレを用意しろと言っている』


『はっ……はい』


 店主は泣き出してしまいそうな顔で、荒れた店内のショーケースからバスケットをだした。


『バスケットは、二つ用意してくれ……アリシアはアーモンドクリームでいいのか?』


『うん! クロードの次にアーモンドクリームが大好き!』


 現金な女だ……

 先程まで俺の腕の仲で『死にたくない』と震えていたくせに……クロードの横顔を見つめるエメラルドの瞳は、完璧に蕩けている。

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