BLack†NOBLE

 無表情な横顔に、腹が立つ。


 ソファーを蹴り飛ばし、蔵人に掴みかかる。シャツのボタンが幾つか弾け飛んだ。


 蔵人は糸の切れた人形のように、ただそこに座っている。



『フィレンツェに引き返せ! 彼女に会わせろ!』



 兄はククッと小さく笑う。すぐにクツクツと肩を揺らして笑い出した。


 ふざけた調子の蔵人の視線と怒りに満ちた俺の視線がぶつかる。


 ふざけていても、その鋭い瞳は全く力を失わない。



「日本語はどうした? もう忘れたかのか?」


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