BLack†NOBLE
────PIPIPI
そんな不安を、助長するかのように部屋に備えつけられた電話が鳴り響く。
まだチェックインを済ませた直後なのに、俺たちに誰が何の用があると言うのだろう……
俺の腕から抜け出し、花束を抱えたまま窓から景色を楽しんでいたお嬢様が、不思議そうな顔をして俺をみる。
「あら? 電話が鳴ってるわ」
PIPIPI────
鳴り止まぬ電話は、外部からの着信を告げる赤いランプが点灯していた。
「柏原、でないの?」
ダメだ。出れない。
この電話が迷宮入りさせたはずの、俺を過去へと呼び出すための合図だったのかもしれない……
過去の俺は彼女には相応しくない危険因子だ。最初から分かりきっていたことだけど、目を背けたい。