BLack†NOBLE
「茉莉果は趣味とかあるのか? もし退屈しのぎになるようなものが用意できれば、手配させよう」
蔵人は、窓の外を眺めながら呟く。
俺は、反対側の窓の外を眺めながら答えた。
「呼び捨てにするな……俺の婚約者だ」
「本人が茉莉果と呼ぶことを了承してくれた」
するだろうな……彼女のことだ。何の策略もなしに「いいわよ」と可愛らしく頷くだろう。
俺の嫉妬心など、彼女は一生理解してくれないだろう。
「彼女は紅茶と甘い菓子と、住みやすい屋敷に庭園があれば退屈はしない」
小さな世界で住んでいる。俺が外出を促さなければ、屋敷から出ない人だ。
ああ、ショッピングが趣味かもしれない……。日本にいても彼女の散財の才能は素晴らしい。でも、フィレンツェで充分楽しまれたので数日は我慢できるだろうな。
あの時は、幸せに満ちていた。もっと思う存分、ショッピングを楽しませてやればよかった。