BLack†NOBLE
『瑠威、お願いよ。もっと顔を近くで見せて。年はとりたくないわ……手の届く距離にいてくれないと視界が霞むのよ。嫌になっちゃう』
蔵人が、「ここに来い」というので、訝しげにローザに歩み寄る。
シルバーブロンドとなった髪に、深い皺が刻まれた顔。綺麗に年を重ねてきたのだろう……静まった湖畔のように穏やかな女性だ。
『ローザンヌ・メルフィス。俺の義母だ』
『メルフィス……』
ということは、メルフィスの妻か?
頭の中が釈然としない。幾つもの疑問が沸く。次から次へと、泉のように疑問が溢れていく。
メルフィスに付け狙われて俺の両親は命を失った……何故、彼女は穏やかに年を重ねている?
俺たちの母親のことも、さも親しげに語っていた。
メルフィスのせいで俺がどれだけ辛い思いを抱えて生きてきたか……