BLack†NOBLE
───蔵人はどこだ?
船のデッキでは、シチリアに来る時蔵人の部屋の護衛をしていた男が銃を乱射させている。
ここからでも見える。使い物にならなくなった左腕から血を流している。
「蔵人!」
アイツ、どこに消えた?
生きた心地がしない。マセラティの皮のハンドルを握る手が汗ばんで気持ちが悪い。
『瑠威、クロードはどこ?』
『今、探してるっ! 窓から顔を出すな! 撃たれたいのか、馬鹿女!』
『だってぇ、怪我してる人がいる!』
『わかってる……だけど、蔵人からお前のこと頼まれてる。大人しく、この中にいろ』
だんだんと銃声がまばらになっていく。相手が撤退をはじめたようだ。
『撤収の準備をしろ!! 怪我人を置いていくなよ!』
蔵人の声だ!
男たちが走り出す。
陸と海では、銃の正確さでは陸が有利だが逃げ道の確保は難しい。虫を蹴散らすよう四方に散っていく。
赤と青のライトが交互にちらつき、警察車両が港へ近付いてきた。
『蔵人っ!』