BLack†NOBLE


 船から蔵人たちが降りてきた。銃声はヘリの爆音にかき消された。


『瑠威! 相手が諦めた。引き上げるぞ……ヘリに乗れ。空から相手を追う』


『ああ、できればもう二度とシチリアには来たくない。最悪だ』


『普段は陽気な街なんだけどな、余所者駆除が邪魔なんだよ』


 車から降りると、巻き起こる強い風に足を踏ん張る。アリシアの手を握り車から下ろすと、彼女は一目散に蔵人目掛けて駆け出した。


 船は捨てていく気らしい。幾つかの機材を下ろし、蔵人の部屋にあったフィレンツェの絵画がヘリに積み込まれた。


『アリシア……悪かったな。一緒に行こう』


 蔵人は右手に銃を握ったままアリシアを抱き締める。


『うん、絶対来てるって信じてたもん』



『完全撤収しろ!』


 残された男たちは、マセラティに乗り込んだ。まだ海に発砲している奴もいたが、無理矢理車に乗せられていた。


 怪我をしている奴もいる……自力で歩けずに担がれている奴もいる。



 こんなマフィアの世界で、蔵人は生きている。


 馬鹿げてる。こんなの間違ってる。






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