BLack†NOBLE


 ヘリが旋回した。


『追跡は止めろ! 本土に迎え!』


 蔵人の頭がグラリと揺れて、俺の肩に落ちた。



『Ospedale! Pront Soccorso!』


 レイジの震えたイタリア語は、ただの単語に聞こえた。これは現実ではないのかもしれない。

 
 病院…… それも緊急受け入れ体制が整った病院のことを操縦士に伝えていた。

 レイジは『あああ……クロード様』と悲痛に叫ぶと、この世の終わりとばかりに嘆く。



『レイジ!』


 蔵人の顔は血の気が引き、唇が蒼白くなっていく。怪我は、脇腹。弾丸は貫通していなそうだ。



『レイジ! 止血する。何か道具がないか? レイジ聞こえてるか! お前の助けが必要だ! 蔵人を殺す気か!』


 大の男が、涙を流しこの不運に絶望していた。


『レイジ! 頼む……この機体に救護箱とかないか!? あるだろっ?』


 蔵人の黒いスーツが鮮血で湿っていく、俺は両手で力の限りその傷を抑えた。

  
 レイジは力なく首を横に振る。






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