BLack†NOBLE


 こんなことしている場合じゃない。はやくレイジを呼んで、蔵人の様態を確認しなくては……


 彼女を抱くと、甘いフリージアの香りがした。


「何していた?」


 彼女の肩に顎をのせて、その手元を覗く。


「これは、プレストフラワーよ。お兄様が退屈をしないように……ってキットを買ってきてくださったの!」

 プレストフラワーとは、日本でいう"押し花"だ。

 嬉しそうに、手に持ったフリージアを俺の顔に突き付ける。


「蔵人が?」


「そうよ。このプレストフラワーを綺麗に並べて、透明の樹脂で固めるの。

 もし、上手にできたらお兄様の部屋に飾ってくださるんですって!」



 彼女は少し興奮したように、捲し立てた。二十インチ四方のパネルの中には、とてもセンス良く花が散りばめられている。


 贔屓目のお世辞は抜きにして、とてもセンスがいい。





 彼女にこんな才能があったなんて……とても意外だ。それを発掘したのが、蔵人だなんてますます腹がたつ。

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