BLack†NOBLE
 彼女の顎を乱暴に掴み、強引なキスを迫る。

「んっ……」と苦しそうにしかめられた眉がハの字になる。


「とてもお上手ですね……お嬢様。

 白いフリージアの花言葉は「純潔」「無邪気」お嬢様にピッタリの言葉です」



 答えを待たずに、深く口を塞ぐ。その純潔で無邪気な彼女を汚しているのは間違いなく俺だろう。



 もう止めなくては…… 自分が辛くなるだけだ。これが最後の口づけ……



 明日の朝には、日本に帰そう。それが彼女にとって一番安全だ。

 この屋敷はいつ攻め込まれるかわからない。そればかりか、蔵人がいない今は味方もいつ敵になるかわからない。




「柏原……」


 湿った唇は艶やかに光り、その純潔さゆえに悩ましい。白く細い指が、俺の肌をなぞり肩に触れる。


「大丈夫? 腫れているわ」


 俺は、その指を自分の指に絡ませ手の甲にキスをする。フリージアの強い香りがする、世界で一番愛しい手だと思う。





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