BLack†NOBLE
「何よ……柏原なんて……」
腑に落ちないといった表情の彼女を残し、部屋を出た。
通路に一人の男が立っていた。サイズの合わないスーツを着て壁にもたれかかっている。
俺が部屋から出てきたのがわかると、慌てて直立の姿勢になり両手を揃えた。
『る……瑠威さん』
『お前がジェロか?』
『は……はい!』
スーツの袖からはみ出した、白いシャツがだらしない。
俺たちと同じ黄色人種だが、顔の作りを見ても此方の血が濃いだろうと判断できる。
俺は、トレンチとシャツを奴に手渡す。
『着替えを用意しろ、レイジを呼べ』
『はい……!! ボス!!』
『俺は、オマエのボスではない』
『すみません……あまりに迫力あるし、似てたから……』
捨て犬みたいな顔をした男は『こちらへどうぞ』と俺を案内してくれる。