BLack†NOBLE


「何よ……柏原なんて……」



 腑に落ちないといった表情の彼女を残し、部屋を出た。

 通路に一人の男が立っていた。サイズの合わないスーツを着て壁にもたれかかっている。



 俺が部屋から出てきたのがわかると、慌てて直立の姿勢になり両手を揃えた。


『る……瑠威さん』


『お前がジェロか?』


『は……はい!』

 
 スーツの袖からはみ出した、白いシャツがだらしない。

 俺たちと同じ黄色人種だが、顔の作りを見ても此方の血が濃いだろうと判断できる。


 俺は、トレンチとシャツを奴に手渡す。



『着替えを用意しろ、レイジを呼べ』


『はい……!! ボス!!』


『俺は、オマエのボスではない』


『すみません……あまりに迫力あるし、似てたから……』


 捨て犬みたいな顔をした男は『こちらへどうぞ』と俺を案内してくれる。



< 236 / 509 >

この作品をシェア

pagetop