BLack†NOBLE


『確かにクロードは、少し感づいていたかもしれないわ。佑も手を焼いていたみたいね。

 でもね、瑠威。これだけは信じて欲しいわ。メルフィスは悪じゃない。

 私の夫も、あなた達の父親も、理想を追い求めていた。悪に打ち勝つ、もっと甚大な組織を。今のメルフィスは、その理想に近いわ。クロードは、よくやってくれている』


『答えになってないだろ。マフィアは、マフィアだ』


『答えなんてないのよ。佑は、クロードにも瑠威にも、自分の理想を追わせる教育をした。

 だから、あなたは今そこにいる』



『ここにいるから……俺は大切なものを失った。どうして、あの夜ローザは俺に全てを話してくれなかった? 頼りなかったからか? 父親も蔵人も、皆して俺をなんだと思ってるんだ!』



『瑠威、待ちなさい! あなたが大切だからよ! 怒りに我を忘れてはだめ! あなたはこれ以上何も失うことなんてないわ! 瑠威!』



 これ以上何も答えが出ないだろう。



『瑠威、待って切らないで……!』



 赤いランプを押して会話を終了する。それを石のタイルに投げつけると、大破した。

 小さな部品が飛び散り、それを革靴で踏みつける。



 

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