BLack†NOBLE
「柏原、何か言いなさいよ。ここに来てから、少し変よ?」
彼女は、テーブルをバンと両手で叩く。のっていた食器が、ガチャンと音をたてた。
マナー違反だ。
わだかまりを吐き出すように「はぁ」と盛大な溜め息をつくと、彼女の怒りの導火線は勢いよく燃えた。
「なによ……それ……私は、柏原が来てくれるのをずっと待っていたのよ?」
「わかったから……
この家は、妙に居心地がいいんだ。日本と違って母国は住みやすい」
窓辺の勿忘草を眺めながら、俺は彼女に初めての嘘をつく。
「貴女のワガママを聞いていたら頭が痛くなってきた。
本当は執事なんて職業向いてなかった。両親が死んで行き場がなかったから仕方なく働いていただけだ」
「嘘だったの? あれは全部、嘘だったの?」
嘘なんかじゃない。貴女との平穏な日々に何度救われたことか……
恐くて彼女の方を見れない。目が合えば、気が狂ってしまいそうだ。
本心は、日本に帰りたくて堪らないのだから。