BLack†NOBLE
「俺は、お前が俺に会いたいと思う分、会いたくなかったよ……蔵人(くろうど)」
「はははっ、上手いな。やっぱりお前は最高だ」
蔵人は、狙いを定めるように目を細めた。
どこかに逃げ道がないか……?
一人なら、まだしも、この状況では俺は完全不利だ。
さっきヴェッキオ橋ですれちがった男もいる。つけられていたわけか。
「わかった……お前の言うとおりにするよ」
彼女を背後に追いやり、両手をあげた。
なんとかして、彼女だけは日本に帰したい。
「言いなりの瑠威なんていらないんだよ。気に食わない」
蔵人は、ゆっくりとこちらに近付いてくる。
「両親の墓前に、大切な女を連れてくるような瑠威は気に食わない」
背に隠れるようにしていたお嬢様が、顔を出す。
「ルイって、ひょっとして柏原の名前? あら、やだわ……なんて可愛い名前かしら! だから隠していたのね? 柏原ったら」
どこか拍子抜けしてしまうほど、冷静な彼女。
強盗犯に人質にされても、平然としていた。縛り付けても、ピックで脅しても冷静だった彼女。
本物の銃口をむけられていても、そのペースは崩さない。