BLack†NOBLE
『ここにいる全員がそう心掛け、部下に徹底するよう教育し直せ……いいな、セシル?』
オールバックは軽く視線を避けて、ワインを飲みながら頷いた。
ドラッグは、金になる。一度手を出せば病み付きになるだろう。
『ミラノに出向いて奴らを誘き出す。会談の場所の理想は、ムラーノだな。レイジ、手配できるか?』
『ムラーノ?』
俺が、彼女との宿泊地として選んだ場所は昔から職人の街として知られてきた。
小さな島に入る為には、水上船に乗らなければならずにセキュリーティチェックもかなり厳重に行われる。メルフィスの組織力がそこを突破できなかったら笑ってやる。
『腑抜けだと思われるぞ……』シチリアが呟いた。
『別に構わない』
もう二度と会えないのかもしれない彼女の寝顔を思い出す。
今、一番必要のない記憶だと思った。むしろ邪魔だ。戦うのが恐くなる。