BLack†NOBLE
彼女は膝に埋めた顔を、力なく左右に振った。
「……柏原の作った料理が食べたいの」
震える声が、あまりにも弱々しく夜の静けさに消えていく。
「柏原が隣にいてくれないと、寒くて眠れない……」
「俺に、どうしろと言いたい?」
「私、柏原と一緒にいたい……柏原が、嫌がることしないから、考えなおしてよ!」
彼女がゆっくりと顔をあげる。泣き腫らし瞳は赤く、白い頬に幾筋もの涙の跡がついていた。
こんなに弱く痛々しい彼女を、はじめて見た。こんな姿見せつけられたら、こっちだって辛い。
「俺は、貴女を脅かす存在だから……明日別れてしまえば互いに別々の人生を歩める」
「そんなの柏原が勝手に決めたのよ! 私は納得してない」