BLack†NOBLE
手を繋いだまま屋敷に入り、三階の西奥の部屋に彼女を送り届けた。
彼女を納得させて部屋を出なければならないのに、繋いだ手をいつまでも離せない。
彼女は微笑み。じっと待ってくれた。
彼女を前にすると、俺はいつだって世界で一番腑抜けた男になってしまう。
「俺は貴女に待っていてもらう資格なんてない。兄を見捨てて、貴女と日本に帰る道ばかり考えていた。兄弟なのに……
世界で二人しかいない本物の家族を、俺は恨んで生きてきた……」
どうせならとことん格好悪く全てを彼女にさらけ出そう。
「柏原は、すぐそうやって諦めようとするのが悪い癖ね。知らなかったのは、しょうがないじゃない。
そもそも、私かお兄様を選択しなくてもいいのよ。私とお兄様を両方選べばいいの!
いっつも、逃げようとするんだから」
彼女の冷静な声が、俺の生き方を否定する。
「泣かないで……柏原。もう、私は柏原しか愛せない。ちゃんと最後まで責任とりなさい」
細い指が俺の頬を撫で心配そうな顔が、俺を見上げていた。
「泣いてない……」
ふふっ……と笑い声がして、冷えた唇が慰めるように俺の唇を癒す。
目一杯に背伸びしたぎこちないキスは、甘くて胸が苦しい。