BLack†NOBLE

 屋敷の外は、風が吹き少し肌寒そうだ。窓辺に咲いた勿忘草は、小さな花を揺らしていた。

 昨夜は忌々しい花だと睨み付けたが、今朝は可憐で可愛らしい花だと愛でる自分が可笑しい。



「夕食とらないで、柏原がエッチなことしたから……私、すっごくお腹すいてたのよ」


 お嬢様がミネストローネの器を上げると、朝食の席に仕えていたニナが歩み寄る。


「おかわり」


 ニナは、そっと微笑み頷いた。


 俺も負けじと腹が減っている。途中意識が途切れていたくせにと心の中で舌打ちして、盛られたフルーツを麦のビスコッティにのせて頬張る。

 苦めのエスプレッソを飲むと、彼女は眉をしかめた。



「柏原、黒いコーヒー飲むのね……」


「何か問題でも?」


「私、紅茶派なのに」



 そんなことはよく知っている。


「朝は、エスプレッソだろ」


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