BLack†NOBLE

 エスプレッソを飲み干して席を立つ。彼女は不安そうに首を傾げた。


「プレストフラワーは、完成できそうか?」


「今日か、明日には完成するわ」


「そうか、楽しみだな。蔵人の部屋には勝手に入るなよ? それ以外、この敷地の中は好きに動いてかまわないから」


「ええ、お庭の花を見ながらお茶して、ニナとお喋りする。

 でも柏原は? またどこか行っちゃうの嫌よ。私も行きたい」


 彼女の手が、俺のジャケットの裾を掴む。可愛い仕草だ。


「すぐに戻って来る」


「信用できないわ。私一回捨てられそうになったのよ?」


 泣き出してしまいたいのを我慢するように、顎をツンと上げて横を向くと袖を掴んでいた手を離した。


 自分を安心させてから行けということだろう……



 皺になった裾を払うと、咳払いを一つ。

『ジェロ、ニナ部屋から出ていけ』

 二人は慌てて部屋から出ていく。



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