BLack†NOBLE

 マフィアの掟は、厳しく残酷だ。


 だけど俺は、それ以前に誓った忠誠がある。


 
 彼女の前で膝をつき、優しく手のひらを包む。手の甲に唇を押しあてると、彼女の頬が緩んだ。




「もう貴女を一人には致しません。必ず戻って参ります。茉莉果お嬢様」


「一人で日本に帰るのは、嫌よ……」


「ええ。昨夜、貴女が流した涙を忘れません。どうか信じてくださいませんか?」



「……もういいわ、行ってらっしゃい」


「ありがとう」


 部屋を出る前にもう一度彼女にキスをすると、「苦い~」と眉をしかめながら嬉しそうな顔をする。



「柏原……、結婚してもたまに執事バージョンに戻ってくれない?」

「さあな」


 愛らしい俺だけのお嬢様を残して部屋を出た。執事バージョンはおしまいだ。ここからはマフィアバージョンか?



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