BLack†NOBLE
『……カルロ様は会議室でお待ちです』
ジェロは、シャツとスーツの袖を揃えようと試行錯誤していて、ニナが俺にそう伝える。
全く使えない男だ。
『わかった』
長い廊下に出ると、タイを締め直す。
俺の背丈程ある観葉植物に水をあげている男がいた。
『おはようございます。瑠威様、今朝は何か良いことがありましたか?』
年は、ローザと同じくらいだろうか?
皺が刻まれた顔は、湖畔のような静けさとゆとりがある。
『何もない』と短く答えて、そこを通過すると男は深々と頭を下げた。
頭の切り替えは苦手ではないはずなのに、顔が元に戻らない。
窓に自分の姿を写して、蔵人のように隙を無くす努力をする。
……鎮まれと、小さく唱えた。