BLack†NOBLE
カラビニエリ……嫌な名前だ。出来れば、その名前を聞きたくはなかった。
この国の公的警察機関の中でも、特に重要な犯罪を取り締まる組織だ。準軍的な役割がある。
『先日から繰り返されている銃撃戦に痺れをきらしたのだろう。今朝からナイトクラブの摘発も始まった』
カルロは、表情一つ崩さずに報告を続ける。
『ミラノのクラブで、昨夜違法ドラッグの売買があった。メルフィス管轄のクラブ全てに、カラビニエリの捜査が入ることになった』
『カラビニエリを動かすとは、フェアじゃないな。
ばら蒔いたドラッグを、メルフィスが取り扱っているドラッグだ、とでも言ったのか?』
『そういう事だろう。
メルフィス最大の侮辱を受けた。お前は、女とジャレ合っている場合ではない。ローザ様は、非常に悲しんでおられる』
カルロの瞳に、怒りが孕む。俺を敵視するような視線が突き刺さる。
『お前の言う通りだな……』
忘れられたように取り残されていた葉巻の木箱に手を伸ばす。
その中の一本を手に取り、カッターで先端を切り落とすと口にくわえた。
赤いマッチを擦り、スーッと息を吸い込み火をつける。葉はパチパチと小さな音をたてて煙をあげた。
ふーっと深く息を吸い込み、肺に悪い空気が充満していく。細胞が萎縮して、血流が悪くなるなら煙草は嫌いだ。
『吸うか?』
木箱とマッチ箱を投げると、カルロは俺と同じ作法で葉巻に火をつける。