BLack†NOBLE
ここにきてこの展開か。蔵人を傷つけ動揺を誘う。
相手はもうメルフィスが欲しいわけじゃない。多分、メルフィスを崩壊させようとしている。見限ったか? だとするとチャンスだ。こっちには、まだカルロのような忠誠心の熱い部下が残っている。
公的機関を使っても、メルフィスを没落させたいわけか……それはそれで好都合だ。
撃ち合いするより、俺には遥かに好都合。
『元老院に父の知り合いがいる。メディアで健在は確認している。蔵人が縁を切っていなければの話だが、カラビニエリを抑制できる政治家だと、父から聞いている』
過去の父親の呟きを思い起こし、細い糸を探るように頭を整理させていく。
『今までメルフィスが公的機関に取り調べられたことあるか?』
『ない』
『多分、その政治家に金が動いたか……蔵人が負傷してメルフィスが瀕死だと知られたか……とにかく使者を送ってこっちの健在ぶりをアピールしてこい』
公的機関と金のスキャンダルは絶好の武器だ。メルフィスにカラビニエリの捜査が及んだことなど大した騒ぎにはならないくらいのスキャンダルがあればいいけどな。
『こっちにスキャンダルがあった場合はどうするんだ?
例えば、幹部の誰かがドラッグ売買の利益に目が眩み、コッグとグレコの言いなりになっていたり……』
『カラビニエリの捜査に全面的に協力するようにと、ファミリー全員に通達しろ』
ミラノ界隈の奴等が関与している事は間違いないだろう。幹部の不審な態度がそれを充分証明していた。
『餌食にするのか? お前、自分の言ってることがわかってるのか? ここにも捜査が及ぶぞ! クロード様の怪我や、お前の女をどうやって説明するつもりだ?』
『父が蔵人と俺にどれほどのモノを与えてくれたのか知らないが……信じる。ここに捜査が及ぶ前にファミリーは事態を鎮圧させる。
捜査に振り回さているように見せかけて、諸悪の根元はわかっているんだ、そこを叩けば全て終わる。メルフィスは再び圧倒的にマフィア界に君臨し、最終的に俺たちが手綱を握る』
『お前は、犠牲を払っても全てを自分の思い通りにするつもりか?』
『犠牲はでないほうがいい。ただ身内を甘やかすつもりはない。何かの頂点に立つなら身は潔白のほうがいいだろ』
『……祐様とボスはなんて顔をするだろうな?』
冷たい石の銅像みたいなカルロが肩を揺らして笑いだす。