BLack†NOBLE
カルロは葉巻をくわえたまま、ゆっくりと席を立つ。
『レイジも、こんな若僧の子守りで大変だな』と言いながら、ダイヤカットのアッシュトレイで葉巻をすり消した。
少し悩んだ顔で俺を見つめてから、ゆっくりと近寄ってきた。
俺が身構えると奴は足元に膝をついた。
『お前は死なせはしない。世話が焼ける小僧だ。ミラノには俺も行く』
カルロが、俺の手の甲に誓いのキスをした。
不思議と嫌悪感はない。それと引き換えに、信頼された……という安堵感が溢れていく。
『期待しているぞ瑠威』
それだけ言うとカルロは部屋を出た。
レイジも『準備がありますので』と頭を下げて部屋を出る。
黒い皮の椅子だけが並ぶ殺風景な部屋で、葉巻の焼ける匂いだけがする部屋で、俺はこのメルフィスという組織は嫌いじゃない、と思った。