BLack†NOBLE
『そうか……? でも、このパネットーネは美味いな』
クリスマスシーズンになると街のあちこちで売られるパネットーネ。食べ飽きる程食べていて、こうして口にするのは久々だ。
惚けたフリをしてパネットーネをまた一口食べる。
『セシルは、どうやってミラノのトップになったんだ?』
アンドレは膝の上で拳を作りレイジの顔を伺う。それに気がつかないふりをして、エスプレッソをゆっくりと飲み込んだ。
馬鹿な弟でも演出してやれば蔵人の株もあがるだろう。
『セシル様は、父上が……』
『なるほど、世襲か。生まれた家がよかったんだな。俺と一緒だ』
アンドレはわざとらしく咳払いをした。頭の良さそうな男だ。いや、かなりいい。
誤魔化しはきかない相手なのかもしれない。
『レイジ、カジノへ向かう。ああ、どこかで昼食をとってからにしよう。アンドレも招待する。イタリアの景気の話でも聞かせてくれ』