BLack†NOBLE


『夢だろ……』


 ホテルを見上げた。いいホテルだ。真向かいの悪趣味なカジノと比べて落ち着いている。

 光を反射するガラスがチカチカと光る。



『はやく行きましょう』


 女が腕を引いた、妖気な笑みを浮かべて高いヒールの靴で器用に歩く。



『ちょっと待てよ』


 ホテルのエントランスに入ろうとした女の腕を掴んで、裏路地に誘い込む。

 大通りから、数メートル入れば古い建物に囲まれた暗い路地だ。



『ベッドより、こういう所がいいの?』


 ネイビーのカクテルドレスを壁に押し付ける。細い腕が首に絡まり、首を傾げた女には余裕がある。


『興奮しないか?』

『するわ、嫌いじゃない』


 
 首筋に噛みつくようなキスをする。華やかな香水の香りがした。

 カクテルドレスに手を這わせた。腰から足をなぞると、女の甘い吐息が耳にかかる。


 胸元を開くと『こんな予定じゃなかったけど……好きにして』と挑発的に囁いた。



『ああ、好き勝手にさせてもらう』




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