BLack†NOBLE
短く繰り返される呼吸は弱く、右手は腹の上で強く握られた。額に浮かんだ大粒の汗を拭ってやった。
「セシルが道連れになった……セシル……」
「蔵人、わかった。だから、もう喋るな。顔色が真っ青だ」
「鎮痛剤が切れただけだ……」
そんなもの使わないと動けないくせに、無茶しないで欲しい。
大切な命が奪われる度に俺たちは自分を攻めることしかできない。
瞳を強く瞑り眉をしかめたままの蔵人は、声も出さずに俺に背を向けた。
背中に手を回し、吹き抜ける風から蔵人を守る。
蔵人が正しいわけじゃない。だけど、俺は蔵人を信じるべきだ。