BLack†NOBLE


『任せた、カルロ』


 行き場のない悲しみと怒り。逃げ場のない現実の残酷さ。


 ただ、嘆いてばかりじゃダメなんだ……


 俺には守らなきゃならないモノがある。


『ああ、必ずや決着をつけてやる』


『その前に、蔵人と俺をフィレンツェの屋敷まで送り届けてくれ。疲れた』


『わかっている』


 冷たい風が頬にあたる。不安定な足場が時折大きく揺れた。



『カラビニエリを動かしたの……蔵人だろ? レイジ』


『はい、その様です』


 蔵人は青白い顔で、歯をニヤリと見せて笑った。


「コッグとグレコが動かせるわけないだろ……弟に危険が及ばないように、俺はセシルを裏切った。

 それなのに……アイツは俺に命を捧げた。後味が悪いな、あの世でセシルに合わす顔がない」



「お前は当分逝かないよ」





< 382 / 509 >

この作品をシェア

pagetop