BLack†NOBLE
「ねえ、柏原。この絵、素敵ねー。どこの風景なの?」
数日が経過して、夕食後、大広間に置かれたままになっている絵画を彼女と眺めていた。
襲撃にあったクルーザーに飾られていた絵だ。
「これは、俺たちが住んでいた家から見渡せた景色だ」
「まあ! 凄い! 高台に住んでいたのねー。羨ましい。私の部屋からは屋敷の庭しか見えないもの」
俺の隣で頬を膨らませた彼女が可笑しかった。
「紫音邸は広大な敷地だからな」
頬をつつくと「そうなの? でも何だか、その庭園が見たい気分だわ」と首を傾げた。世間知らずで、無垢な彼女と一緒にいると、自分が何者かなんてどうでもよくなった。