BLack†NOBLE

 フィレンツェの屋敷にも慣れたもので、複雑な通路を案内なしに会議室に到着した。

 上級幹部が集まり会議がおこなわれるだけの部屋だ。

 俺が扉の前に立つと、内開きの濃いブラウンの扉は勝手に開く。



『皆様お待ちです』レイジが囁いた。


『ああ』と短く答えて部屋に足を踏み入れた。


 蔵人は、ミネラルウォーターを飲みタイを緩めていつもの席に偉そうに座っていた。幹部にそれぞれの付き人、いつもの顔ぶれにアンドレも来ている。


『酒はドクターストップか? ミネラルウォーターなんて様にならないな、蔵人』


 そこには寒気がする程の、どす黒いオーラを放つマフィアのボスがいる。


『俺も長生きしてみたくなったんだよ。座れ瑠威、今日はセシルの弔いだ』




 蔵人は、セシルの席に大きな白いカサブランカの花束を置くと十字をきる。


 幹部たちも立ち上がり、沈黙の中で蔵人に倣った。



 カサブランカの花言葉は、"威厳"。

 セシルのメルフィス上級幹部としての威厳を尊重する。


 黙祷を捧げ、誰も言葉を発しなかった。




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