BLack†NOBLE


 馬鹿な奴だ。ここにいる全員が大馬鹿だ。


 セシルだって、あんな場所で無防備に蔵人なんか庇わなくてもよかったのに……


 カサブランカの強い香りが、セシルの存在をそこに際だたせる。アイツの家族はセシルが死んだ本当の理由すら知らされはしない。

 両親が死んだ本当の理由を最近まで疑問に思っていた俺のように、セシルの家族もわだかまりを抱えて生きていく羽目になる。






『大切な命だ……セシルはドラッグに手を出したが、どこか罪悪感を抱えていた』


 蔵人の低く綺麗な発音のイタリア語が会議室に響く。その沈痛な面持ちに、胸が痛い。


『カルロ、事の運びは首尾よく進めてくれたか?』


 カルロは大きく頷いてみせた。


『はいボス。指示通り、何事もなかったかのように全てが元通りです』


『俺を狙撃した組織は?』


『トリノのミカエルファミリーです。制裁は与えましたが、奴ら怯えて平謝りの一方で話になりませんでした』


 蔵人は『そんな雑魚相手にしなくていい』と呟いて足を組み替える。そして、セシルの席の後ろで目を赤くしていたアンドレに視線を移した。


『アンドレ、葬儀の執り行い大変だったな』


『いえ』


『ミラノの様子は?』

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