BLack†NOBLE

 彼女は両方を選択すればいいと言い。

 蔵人は彼女だけを選べばいいと言う。





「蔵人、俺は誤解していた」


 蔵人は、会議室の照明を落とすと傷口を押さえながら出入り口のドアを開いた。


「何に?」



「俺は父を誇りに思う。マフィアを正しく存在させようと俺たちを育て、蔵人はその意志を継いでいる。

 俺は何もわかっていないから、蔵人みたいにはなれないけど……でもお前のことも誇りに思う。

 マフィアになったことも、後悔なんてしてない。生涯メルフィスの一員でいる。だから……」


「わかったよ。

 金と女と酒に不自由しない、それに信頼できる部下がいる。マフィアって最高だ。

 瑠威にプレゼントがある。明日、レイジにそれを渡すように伝えておく」



「プレゼントなんていらない」



「もらっとけ」



 彼女と蔵人を乗せた天秤が、綺麗な均一を保っていた。頭の中が釈然とせず戸惑った。


 このまま日本に戻って、俺は今まで通り生活できるのだろうか?






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