BLack†NOBLE
車はフィレンツェの見慣れた坂道を登っていく。どこに向かっているんだろうか?
この道は……
彼女はイタリア語がわからないので、隣で鼻歌をうたっている。
その横顔を見つめると「なに?」と首を傾げた。
「何でもない」と答えて窓の外を眺める。
『私は自分のことを不憫などと感じたことはありません。
そんな生活を続けていたらマフィアと関わるようになり、先代は見るに見かねて私たちに保護して、教養を与えてくださった。衣食住の保証をしてくれた。感謝しないわけがない。
それに、クロード様の気まぐれは素晴らしいですから……さあ、到着しました。空港に送る前に此処へ瑠威様を案内しろと言われました』
やっぱりここが!?
焦る気持ちでレイジが扉を開くより先に自分で開いて慌てて車から降りた。足がもつれて、心臓がうるさいくらいに激しく動いて指先が冷たくなった。
『どうして此処があるんだ? レイジ』