BLack†NOBLE
高台にある静かな場所。
冷たい石の壁、濃いグリーンのルーバが閉じたままの窓。その中にある両開きの窓が開いて、今すぐ母が顔を出しそうだ。
─────おかえり、瑠威。と言って、はやく家に入るように促されるんだ。
『クロード様が再建しました。全て元通りです。
瑠威様へプレゼントするとのことです。どうぞ』
レイジの大きな手に握られていた鍵を受け取る。
「柏原、ここはどこなの?」
「俺たちの住んでた家だ」
彼女は途端に目を輝かせて、わくわくした表情で「まあ? 今から中に入れるのかしら?」と訊いてきた。小さく頷く。
『クロード様は時折こちらにいらしておりました。この場所は私とローザンヌ様以外は知りません。
ここを瑠威様に明け渡すと言うことは……』
『いつか帰って来い……て意味か? 俺が茉莉果を守り抜ける自信ができたら、ここに来てもいいって意味か?』
レイジは惚けたように笑いながら首を傾げた。