BLack†NOBLE
『そのことについては、クロード様は何も仰いませんでした』
蔵人らしいな、大切なことを伝え忘れるんだな。なら、こっちは勝手に解釈してやる。
『悪いけど、彼女と二人にしてくれ』
『承知していますよ』
彼女の手を取ると、指を絡めた。素直に嬉しそうにする彼女を何度だって愛おしいと思ってしまう。
「どうぞ、お嬢様。案内しよう」
複雑な形をしたウォード錠を差し込み、左に回転させる。カチリと小さな音がして木の扉が開く。
家の中央に小さなパティオがある。柱はなく円錐のガラスで覆われた庭だ。吹き抜けになっていて、そこから太陽の光が注いでいる。
左奥がキッチン、パティオを挟んで南側がリビング。
「何も変わらないな。俺の目の前で全て焼け落ちたはずなのに……」
父親がいつも難しい顔をして新聞を読んでいた皮のソファーに座る。全く同じものではないけど、蔵人が新調したんだろう。
ソファーの横のローテーブルも、ラックも、オーディオも……