BLack†NOBLE
芸術の都フィレンツェを一望しながら、俺は彼女を強く抱き締める。
「誤魔化し方だけど、キスしか思いつかない。キスでいいか?」
「そんなこと聞かないでよ……」
声にならない程の小さな囁き。ピンク色の可愛い唇。赤らめた頬の涙を拭うと、誓いを込めてキスをする。
礼拝堂の鐘の音が微かに聞こえた。
家族になれるんだ。愛しい彼女と、蔵人という兄、それにアリシアもいる。
ここで、俺はもう失いたくはない。
もっともっと、自分の持てる全ての力を注いで守る。
「ずっとこうしていたい……」
「帰るのやめる?」
「いや……次からは、ここに帰ってくると思いたい。俺の家はここなんだ」
「柏原、ほんと嬉しそう! 私もすごい嬉しい」
風でなびく柔らかい髪を耳にかけてやる。白く綺麗な肌に指を這わす。
そっと目を閉じた彼女に、もう一度キスをした。