BLack†NOBLE
────『もうよろしいのですか? 時間ならば、まだ少し大丈夫ですよ』
『ああ、もう十分だよ。いつでも来れるからな』
レイジはクスクスと笑い車のドアを開く。彼女を先に乗せると、窓から家を見上げている。何かを企んだ時にみせる彼女の笑顔だ。
「柏原、私わくわくしてるわ! パティオには、花を植えましょう」
「そうだな、少し殺風景だった」
「寝室には天蓋付きのベッドを置きましょうよ! カーテンは淡い色がいいわ。ピザを焼く窯があったけど、柏原は焼けるわよね?」
「ああ、もちろん。日本での生活も捨てがたいけどな」
彼女の楽しそうな提案一つ一つに胸が高鳴る。
「あら、両方私たちの家ってことでいいじゃない」
「それもそうだな……何だか忙しくなりそうだ」
────フィレンツェの空港は市街地から近くて便利なのだが、小さくて滑走路も一本しかない。
『瑠威様……』
『だから……お前は泣くなって言っただろ……』
空港のロータリーでレイジに抱きつかれた。げんなりしている俺を見て彼女は笑い声をあげた。
『すみません。嬉しいんですよ……クロード様もきっと救われます』
『わかったら、離れろ』