BLack†NOBLE


『私たちは、いつでもお二人のお帰りをお待ちしております』


 レイジの両手が俺の手を掴み、二回大きく振る。


『ああ、待ってくれ』


 なかなか手を離さないレイジを引き離なした。


『ファミリーはアナタたちを必ず守ります。いつでもみていますよ』

『嬉しくないよ、じゃあな』



 荷物を預けて出国手続きを済ませていると、彼女は空港に軒を連ねている煌びやかなショップの方へフラフラと歩いていく。



「いくら限度額のないプラチナカードを旦那様から預かっていても、貴女の散財ぶりは罪だな」



 やれやれ、とため息をついて彼女の後ろに続いた。

 フィレンツェでも持ちきれない程のブランド品やら靴やらで、かなりの量の荷物を空輸する手配をしてあるんだ。


 結婚したら、然りと教育し直さないとな。


「違うの! これ、柏原?」


 彼女が書店に平積みされている、一冊の雑誌を手にとる。 イタリアでもメジャーな芸能スキャンダルを騒ぎたてる雑誌だ。


『アリシア・キース女優引退! 電撃結婚?』


「柏原、何て書いてあるの?」


 表紙には、俺とアリシアが路上で抱き合う写真が掲載されている。

 オマケに、俺の顔が大きく引き伸ばされて表紙を占領していた。



 この写真は、94ページの最悪のワンシーンだ。あの時確かにフラッシュがたかれた気がした。


『謎の超美形東洋人と熱愛、アリシアからの猛烈アタックに対して彼は"キスだけでいいのか? アリシア"と甘く囁いた……』




 
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