BLack†NOBLE

「美味しいクッキーがたべたい! たべたい! たべたいーっ」


「キャラメルキャンディーは? これ美味いぞ」


「やだやだやだやだやだやだやだーっ」


 蔵人が手渡した沢山のキャラメルキャンディーが子供部屋にばらまかれる。

 顔を真っ赤にして怒る聞き分けのない弟を見て、兄はそれでも優しく話かける。


「瑠威、わかった。ママが帰ってきたら、バールのクッキー買ってもらおう。すぐに帰ってくるから」


 この家には、今は自分と幼い弟しかいない。

 優しい母親も、厳しいけど大きな手で頭を撫でてくれる父親もない。


 蔵人は自分も泣き出したい気持ちで、泣きじゃくる弟を抱き締めた。


「いい子でお留守番できないと、ママに褒めてもらえないぞ?」


「だって……だって……」


「男だろ? 泣くな」


 蔵人は溢れ出してしまいそうな涙をグッと堪えた。




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